学びのすゝめ
筆者:岩田屋本店 本館7階 学 IWATAYA担当 因幡
―はじめに
気づけばもう10月に差し掛かろうとしています。
あれだけ暑かった日差しも穏やかになり、肌寒さを感じることも多くなりましたね。
空気もどこか深みを増していくように感じます。
日本茶といえば5月頃の「新茶」も若々しくて美味しいですが、
これからの季節はその時期に採れたお茶をしっかり半年寝かせておいたものが出てきて、より深みのあるお茶が楽しめるんだとか。
そう語ってくれるのは、学 IWATAYAで『季節のうつろいを楽しむお茶会』というテーマで月1回講座を
開講してくださっている池松先生。
今回は基本のお茶の淹れ方や季節ごとの楽しみ方を教えてもらえる本講座に潜入し、お話を伺いました。
―講師紹介
池松 伸彦 先生
福岡市・清川にある、茶舗ふりゅう代表。
平日は筑邦製茶(株)にて勤務する傍ら、土日は紅茶専門店~紅葉~でも勤務し、2010年に独立。
庶民の中で脈々と受け継がれてきた地方番茶の取り扱いを始め、静岡の山間地のシングルオリジン、月に一度の予約制の炒りたてほうじ茶の販売も始める。産地に出向き、生産者や急須職人に直接話を伺うことを続けながら日本茶の魅力を日々伝えている。
昔は音楽の専門学校でドラムを演奏するバンドマンだったという経歴も(!)
そんな素敵な池松先生に日本茶の魅力について教えていただきました。
―日本茶の魅力の1つは、「淹れ方により味わいを変えることが出来るところ」
私はこれを聞いて最初は「??」。
それは技術的な上手い下手によるものかと思いましたが、お話を聞くと少し違うようです。
実際に静岡の「しずかおり」というおすすめのお茶を【3煎】淹れていただき、その味わいを感じながらご説明してもらいました。
■1煎目
氷水でまずはじっくりとお茶の旨味を出す方法。
この時点ですでに私が想像していた所謂「お茶の淹れ方」と異なっていて驚きました。
実際に飲んでみると、お茶の渋みはほとんどなく、出汁のような舌に乗る感じがして再度驚きます。
お茶が緑ではなく透明に近い色なので、これだけしっかりした味わいをしているとは想像できませんでした。
【色の濃さ≠旨みの強さ】で、よいお茶こそ【金色透明】だそうです。
(これについてはきちんと理由がありますが、長編になってしますのでぜひ講座にて。)
■2煎目
次にお湯を入れ少しお茶の渋みを出しつつ、途中で氷を入れることにより柔らかな味わいも残したお茶の淹れ方。ワイングラスに入れて、その色と香りも楽しみつつ味わいます。
先程よりもお茶の渋みが感じられ、旨みも穏やかになっていて品種の特徴である後味の爽やかさを感じることが出来ました。1煎目とはかなり違った味わいです。
■3煎目
最後はお湯のみでゆっくりとお茶の苦みと旨みを出していきます。今回はティーカップでいただきました。
2煎目よりお茶の渋みやほろ苦さを感じますが、品種のもつ爽やかさが後味をすっきりとまとめてくれます。
この一連の流れは、乾物であるお茶の葉を「開かせる」ことによって味わいの異なるお茶を淹れることが出来るそうです。比べて見ると、変化が分かりますね。
(淹れる前~3煎目まで)
①
②
③
④
「〇〇℃で〇〇秒抽出する、というルールを堅苦しく決めなくても、お茶の葉を見れば分かるので、そんなに難しいものではないんですよ。」と池松先生。
自分が淹れていく中で、好みの味を見つけていくのもまた楽しみになりますね。
―お茶にこだわる
一昔前までどこの家庭にもお急須があり、毎日飲んでいた日常使いの「日本茶」。
今では急須自体珍しく使ったことのない方も多いですが、逆にその物珍しさで『嗜好品』として捉える風潮があり、珈琲や紅茶のように道具や品質にこだわりを持って楽しんでいる方が増えてきているようです。
池松先生は、年に数度は八女や静岡などの産地を訪れ生産者さんとの対話を重ねたり、
急須も工房へ赴き、職人さんが一つ一つ丹精込めて作ったものを取り扱っています。
美味しいお茶を提供するだけではなく、その一連の流れを見つめてきた池松さんのお話は深みがあり、お茶の奥深さを知る機会になります。
―最後に
今回、身近にある「日本茶」の奥深い一面を見ることが出来ました。
『お茶』や、その周りにある『生産・道具を作り出す技術』など日本には本当に素晴らしいものがあって、
自国の文化を知ることは“大人の教養”として大切なことだと感じました。
また、お茶は自由に楽しめる!ということも、今回の淹れ方や使っている器を見て思いました。
いろんな器のスタイルで自分好みのお茶を楽しめるのは、わくわくしますね。
そして今回お話をお伺いした池松先生は、とても柔らかな雰囲気の方で、
その授業スタイルも格式張らず講座名にあるように、まるで【お茶会】に呼ばれた感覚で楽しくお話ができるのが、魅力の1つなのだと思います。
(今回の取材で、つい私も長居したくなってしまいました。)
ぜひ気になられた方は、お気軽に【お茶会】に訪れる感覚で講座にご参加ください。
次回は、佐藤華春先生の「華道・池坊」 講座に潜入したいと思います。お楽しみに。
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