学びのすゝめ
筆者:岩田屋本店 本館7階 学 IWATAYA担当 堤田
―はじめに
木々もすっかり色づき、秋の深まりを感じる季節。
秋といえば、「食欲の秋」「スポーツの秋」「読書の秋」など”○○の秋”と例えられるように好きなことに没頭したり、何か新しいことを始めやすい季節だと思います。
今年の夏は特に暑かったので、クーラーの効いた部屋で自堕落な生活をしていた私は、日中の筋肉痛と戦いながらも、夜ランを始めてみたところです。
そんな何か新しいことに挑戦したい秋におすすめする講座は、「芸術の秋」にちなみ「ペーパースクリーン版画」という絵画講座。
まだあまり知られていないペーパースクリーン版画の魅力や講師の大場先生の素敵な人柄がコラムを通して伝われば嬉しいです。
―講師紹介
ペーパースクリーン版画家
大場 敬介
トルコ国アンカラ国立絵画彫塑美術館にて展示、製作実演。CWAJ PRINT SHOW 出品など受賞歴多数。講師としても活動中。
大場 寿子
CWAJ PRINT SHOW出品など受賞歴多数。九州国立博物館にて展示、製作実演。講師としても活動中。
―日本で生まれた現代版画「ペーパースクリーン版画」
ペーパースクリーン版画とは、日本で生まれ育った現代版画です。
版画といえば、小学生の図画工作の授業でおなじみの彫刻刀を使う「凸版」と呼ばれる版式を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、版画にはその他にも「凹版」「平版」「孔版」と4種類の版式に分類されます。
ペーパースクリーン版画は「孔版」に属するもので、「孔」とは”空いた穴”という意味をもっており、穴からインクをローラーなどで押し出し、紙に刷り込んでいく技法です。
ペーパースクリーン版画は、油絵や油性インクなどたくさんの色を使って刷り重ねていきます。
色と色が重なることによって、深い色彩や多彩なグラデーションが生まれます。
―絵に服を着せる感覚で
大場敬介先生の父である、大場正男氏はペーパースクリーン版画の第一人者であり、現代の版画家に大きな影響を与えた人であると言われます。
その父の意志を大場先生が受け継いで作品づくりや、講師として活動をされています。
大場先生は小さい頃から父の影響もありアートに興味を持っており、ある時父と美術館に行った際、絵画よりも「額縁」に魅せられて、”とにかく本場の額縁が見たい!”と思い立って芸術の本場フランスへ行ったそう。
言葉も全く分からなかったそうですが、ヨーロッパではたくさんアート作品に触れ、額縁を見て回り帰国すると、日本の額縁があまりにもお粗末に感じてしまい、額縁を学びに再びフランスへ。
その2度目のフランスで、あるスペイン人の画家と出会い、「人に服を選ぶように、絵に服を着せる感覚を大切にしたらいい」という言葉をもらい、今でもその言葉を大切にし、作品と向き合い、大場先生の作品はオリジナルの額縁に入れているそうです。
―開運だるま制作
では実際の講座に潜入してみます。
講師は2人紹介しましたが、メインは大場敬介先生が担当しています。
本日の講座では、今回が受講2回目という初心者の方がいらっしゃったので、そちらの受講生さまに注目してみました。
講座では絵はがきに自分の作りたい作品を自由に作ることができますが、最初の作品だけはテーマが決まっていて「4色だるま」を制作します。
これは先生が縁起物のだるまが好きだからという理由だそうです。(笑)
ペーパースクリーン版画の製作工程はまず初めに手書きでデザイン図案を起こすことから。
上部の写真は先生の作品例になりますが、このように色鉛筆などを使って色設計までを決めていきます。
それからこのベタ版と呼ばれる紙をカッティングしていきます。
穴をあけた場所だけがインクを透かす特殊な紙です。(フクロウとは違う作品です)
そしてここからはがきにローラーを使って色を押し出していく作業。
今回は4色だるまの1色目の「黒」を入れていきます。
このようにだるまの形でカッティングされたベタ版の上からローラーでインクを押し当てます。
今回は1色目だったので真っ黒のだるまですが、次回以降「茶→白→赤」の順に色を入れていきます。
※翌授業日に撮影させていただきましたが、真っ黒なだるまに2色目の「茶」を重ねました。単色では出ない、深みのある色へと変化していますね。
次回は「白」を入れ、更に色を重ねていくことで更に色彩豊かなグラデーションが出来上がっていきます。
また、先生曰く「4色だるま」の制作の面白いところは、完成が近づくにつれて、だるまの顔が徐々に受講生自身の顔に似てくるところが見どころだそうです。
こちらの受講生さまの作品の完成がとても楽しみです。
また、他の受講生の方は長い方で24年も通われている方もいらっしゃるなど、講師顔負けの腕前の方もいらっしゃいました。
自分の好きなものや気分で自由に作品を制作できるので、受講生の皆さまの個性豊かな作品ばかりでした。
―最後に
今回講座に潜入してみて、版画は紙に刷っていくため、1つの作品を同時に複数枚制作ができるので、油絵や水彩画などオリジナルの原画1枚を描き上げていくものと違い、自分の作品を家族や大切な人などプレゼントできるところがとても良いなと思いました。
また、今回取材をするにあたり、大場先生のこれまでの生い立ちや海外での経験などとても面白いお話をたくさんしていただいたので、先生の話術にも注目の講座だと思います。
このコラムを読んで少しでも気になった方は、学 IWATAYAまでお越しいただけると嬉しいです。
■講座の情報はこちらから
ペーパースクリーン版画
日程:第1・3(火)17:30~19:30
受講料:23,100円(3カ月・6回)
次回は「組み紐講座」に潜入したいと思います。お楽しみに。
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