美術
山本 尚志・グウ ナカヤマ・日野 公彦・ハシグチ リンタロウ
本展では、「しるし」と人類について、4人の作家にクローズして展観いたします。
いま、世の中の流れは急速なデジタル化へのシフトに向かい、ポストヒューマンの時代が訪れようとしている。
それはすなわち「人類以降の存在」の時代である。
その時我々は必ず「では、人類とはなんなのか/なんだったのか」という問いに向かい合わなければならない。
「しるし」は、我々人類の日常生活での意思疎通や記録、芸術表現の中で用いられてきた。そして、他の動物に無い特徴として、
「抽象的な概念」を用いるという点が挙げられる。
しかしながら、そこから生まれた様々な争いや混乱といった問題や弊害もまた、もう一つの側面でもある。
本展では、今回、なんの因果か現代日本にポコっと生まれ落ち、
彼らのバックグラウンドである「書」をワールドクラスの芸術へ変生する4人のアーティストをフィーチャーしたい。
1000年後の書く人々「MINOR MAKER」を示し、自身も「WLIGHTER(書き、灯す人の意)」を名乗る "謎の書家"ハシグチ リンタロウ。
「勝手に思いついた記号」と「意味」との狭間を追求するグウ ナカヤマ。
自身の通勤路で示された看板やサインをひたすら書き留めるだけの日野 公彦。
そして、「モノにモノの名前を書く」というコンセプチュアルなアプローチでコンテンポラリーアートとしての書道の先駆けとなった山本 尚志。
彼らの真摯で馬鹿げていて狂おしいほどの驚くべき作品群を是非とも目撃してほしい。
山本 尚志『ふえ(飛行バージョン)』
34.0×69.5
1969年広島県生まれ。
東京学芸大学の書道コースに在籍中、井上有一のカタログレゾネ(全作品集)の仕事に従事していた。海上雅臣の指導のもと、井上有一の作品のサイズをすべて計測。さらには裏打ち作業にも携わり、およそ3年半に渡って井上有一を研究した。描く内容と作家との関係性を極限まで問おうとする彼の試みは、それまでモチーフには頓着しなかった書道の世界に概念的な要素をもたらした作家として、現代アートの分野でも注目されている。幼少期から身近にあるモノを描き、そこにモノの名前を書き込むといった一般的な書のイメージに捕らわれないダイナミックな表現をしてきた。また、筆、紙、墨にも独自の改良を加え、彼独自のスタイルを確立している。
グウ ナカヤマ『no4.DIRT21s』
45×45×3.0
1975年長崎県生まれ。
小学校2年生から中学校卒業まで書道教室に通う。40歳の時、井上有一の自由でダイナミックな表現に感銘を受け、墨と紙を使った自分なりの自由な表現方法を探し始める。「鳥」をモチーフにした象形文字の様な作品を1年以上かけて自問自答しながらひたすら取り組む。次第に作品数は1000を超え、題材となるテーマも多岐にわたり、やがてそれが自分の文字となった。目の前の作品を見ながら、遠い昔に文字を生み出した古代の人々に思いを馳せ、漢字の起こりである甲骨文字や文字学について制作の合間を縫って学び、自らの表現について柔軟な考察を深める。鳥、月、花、ALIVE、PAIN、星、無…少しずつではあるが己の根底から湧き上がる自らの「文字」を増やし続けている。具体的で決定的な単語を用いていないが、一連の作品を通して記号論や「文字とは何か?」という領域に普及している、独特なインスピレーションを持った現代日本の先鋭的な書のアーティストである。
日野 公彦『WET PAINT』
46.5×71.0
1975年北海道生まれ。
4歳の時、叔父の考案したエポック社の玩具「ポカポンゲーム」に感動、漠然と将来は何かを創作する人間になると決めるも何を創作すればいいのかわからぬまま15年悶々と過ごす。生まれつき喘息が酷く小学校も毎年半分近く通えないような子どもであったため、家にあった白戸三平の漫画や、昼ドラ、銀河鉄道999等、アニメばかり観て過ごす。1994年、国語学の研究をしようと国文学科に入学したが、気まぐれに入った書道部で先輩に紹介された井上有一のコンテ書「コンテもをわり」を目の当たりにし、ただ硬筆で言葉が書かれただけの紙から目を離すことができなくなった事実に衝撃を受け、書を始める。1996年から1年間、ウナックトウキョウにて井上有一カタログレゾネ制作のための作品整理に携わる。井上有一が遺した日記から1970~1976年の間に制作された作品の制作年代を特定する作業や作品展示等を行う。
ハシグチ リンタロウ『COSMYTH』(シェル美術賞2019 入選)
162.0×160.0
1985年長崎県生まれ。
10代の頃に音と感情と言葉が混然となったパンクロックに出会い、創作活動の原点となる体験をする。伝統的な書道技術や美意識を学ぶも、60年代の舞踏や具体、岡本太郎などの前衛芸術に影響を受ける。特に前衛書の井上有一には多大な影響を受け、「書は万人の芸術」であり、「日常から生まれた、日常を生きるためのエネルギー」との考えに至る。2012年以降、日常から遠ざかり高価で伝統的な毛筆は使用せず、身の回りにある安価なタオルで書くようになる。エネルギッシュで大胆な筆致や紙面サイズが特徴。2016年以降、ロックの音に着想を得て、アルファベットやギザギザとした音の波形のような作品を制作、精力的に作品発表を行う。
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