1936年生まれ。グラフィックデザイナーとして活動後、独立。1960年代、寺山修司や唐十郎の演劇ポスターなどで一躍注目を集め、1969年にパリ青年ビエンナーレ版画部門大賞を受賞。1972年にはニューヨーク近代美術館で個展を開催。1980年7月にニューヨーク近代美術館にて開催されたピカソ展に衝撃を受け、その後、画家宣言。
「文豪シリーズ」、「ピンクガールシリーズ」、「Fondation Cartier-The Inhabitants」など横尾がこれまで発表した作品群をMask Portraitとしてアレンジした作品。マスクによって表情がうかがい知れないMask Portraitの数々は、現在の世界的な疫病の流行を創作の源泉として、ウィルスと対立するのではなく受け入れ共存して生きていくという観点から制作。皆がマスクを着用し、その作品の異様さがもはや日常となった昨今の危機的状況を、どこかコミカルにそしてシニカルに表現したこれらの作品には横尾のユーモアが感じ取れる。今までに、発表した作品もマスクをつけることによって、横尾の作品は違った表情をみせている。横尾の作品は、同じ主題を繰り返し反復的に用いて描いていくことが特徴的だが、横尾の作品系列の流れの中でもテーマ性が顕著であり特殊なシリーズと位置づけされている。
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東洲斎写楽の役者絵から着想を得た木版画作品。「摺れ摺れ草」は吉田兼好の徒然草からとっており、作品自体が写楽の役者絵のフェイクであること、また版画の「摺る」をかけて、摺れ摺れ草とタイトルにつけられている。横尾は、花柳壽輔の舞台にて舞台美術を制作した際に、役者絵をもとにしたスライドを上映した。今回の発表される新作版画は、役者絵をもとにした舞台美術からさらに展開されたもの。本来、版画の制作のプロセスの中で「ズレ」をつくらないよう神経質になるが、今回、横尾はその「ズレ」を強調することにより、あえて大失敗を意図的に演じ、版画制作プロセスにおける神経の無頓着さを強調している。また、色彩においても、今回はあえて不調和を生み出している。浮世絵という江戸時代の大衆メディアを題材として、作品を制作し、木版画として複製していくことは、アンディウォーホルに代表されるポップアートの手法に近いものがある。